【共創事例インタビュー#3】QB自治体ピッチ発「公民連携」で総合運動公園の魅力アップをめざす
- インタビュー
2024.9.30
取材の合間に打ち合わせを実施する、NTTビジネスソリューションズ株式会社 バリューデザイン部 ソーシャルイノベーション部門 社会基盤担当 豊田 悠さん × NTT西日本イノベーション戦略室 洞桐 健人さん。
ビジネス環境の変化が加速する中、大企業とスタートアップの連携によるイノベーションの重要性がますます高まっています。QUINTBRIDGEでは、スピーディかつ効果的に共創を進めるためのプラットフォームとしてさまざまなプログラムを用意しています。
今回は、現在募集中のNTT西日本グループが持つアセットとの事業共創プログラム「Business Match-up! 」に関するインタビュー!
第4回の募集テーマであるEV(電気自動車)導入運用支援ソリューション「N.mobi」について、採択のポイントや、QUINTBRIDGEがどのようにして企業間の連携を促進し、具体的な成果を生み出しているのか、募集背景やコラボレーション成功の秘訣についてお話を伺いました。
QUINTBRIDGEではNTT西日本グループが持つアセットと、スタートアップの持つイノベーティブな事業アイデアやプロダクトを組み合わせた事業創出をめざし、NTT西日本グループとのマッチングを目的としたピッチプログラム、第4回「Business Match-up! For Next Value」を開催します。
今回はNTTビジネスソリューションズ株式会社が展開する「N.mobi」を活用し、「❶不動産業」、「❷運輸業」、「❸観光業」、「❹地方自治体」の課題をともに解決する事業アイデアおよびビジネスパートナーを募集いたします。応募いただいた方々の書類選考を実施し、通過した5社(予定)の皆様から、ピッチ大会当日にプレゼンテーションを実施いただきます。その中から弊社との協業親和性が高い企業様を採択し、協業検討に進みます。
詳しくは募集ページをご覧ください。
https://www.quintbridge.jp/program/detail/202407291419.html
(参考)
・過去に実施した「Business Match – up For Next Value」における採択企業との共創成果
第1回:3社のスタートアップを採択し、うち1社とサービス提供済 https://www.nttbizsol.jp/newsrelease/202304201500000891.html
第2回:2社のスタートアップを採択し、1社とPoCを実施、サービス化に向けて検討
豊田さん 「N.mobi(エヌモビ)」は、EV(車両)や充電設備とクラウド上の管理システムを通信で繋ぐことで、電力利用を最適化するソリューションです。EV利用に向けての計画から運用までを支援するサービスや機能をメニューに、サブスクリプション型でご提供している点に特徴があります。
具体的なメニューには例えば、計画段階におけるガソリン車対比での費用や効果の試算、導入段階では補助金の活用や充電インフラを含めた設計・施工、運用段階では電力代を抑制する機能や導入後の効果測定レポート等があり、お客様の円滑なEV導入をご支援しています。
EV市場は、まだ一部のユーザーのみの導入期であり、本格的な成長はこれからです。現在は各自治体が率先して公用車のEV化や充電インフラ整備、EVカーシェア導入等の普及策を進めており、その手段としてN.mobiをご利用または現在進行形でご検討頂いています。この普及策を「いかに地域企業/個人の実際的なEVやカーシェアの利用へ繋げ、地域全体のCO2削減効果を高めるか」が地域課題であり、我々が解決したい課題です。
中長期的には「カーボンニュートラル(特に再エネ)社会へ向けて、EVを起点に蓄電池や太陽光発電など含めた取組を連続させ、ドミノが合流・分岐を繰り返しながら順々に倒れていくようにCO2削減効果を波及させていきたい」。このような大きな青写真の中で多くの企業が取組を始めていますが、どの企業も差別化には至らず試行錯誤を重ねている段階だと理解しています。そのためNTT西日本グループが培った地域との繋がりという土台の上で、我々N.mobi×パートナーがいかに独自の道筋を打ち立てるか、今回の「Business Match-up!」を通じた化学反応に期待しています。
豊田さん 各地域でパートナーと共創するにも、NTT西日本やN.mobiの強みに根差してこそ、広め得る魅力ある取組になると考えています。募集テーマ設定の背景として、我々の強みと希望する今後の展開方向性をお伝えします。
まずNTT西日本の強みの一つとして、自治体営業があります。「自治体の描く構想や計画、目標値に対し、実行の筋道についてご相談を承り、ICTを用いた実行手段を提供する」ことは従来より続けてきた営みですので、N.mobiでも同様に重視しているアプローチです。コンサルティングなど上流工程から参画するなかで、EV普及に向けた施策をパートナーと連携して打ち出していきたいです。EV以外への広がりに向けては、NTTグループとして持つサービスとも適宜連携し付加価値創出に取組んで参ります。
次にN.mobiの機能面の強みとして、EVシェアリング機能や充電制御機能があります。EVシェアリング機能は、例えば「公用車を休日に市民向けに開放する」「マンションの入居者やホテルの宿泊者向けにカーシェアサービスを提供する」用途で反響が良いため、地方自治体のほか、不動産業や観光業向けに拡げていきたいと考えています。充電制御機能は、電力利用を最適化することで費用対効果を高める機能です。将来的にEV車を複数台保有されているような企業様に広くお使い頂けるよう充実した機能を持つため、特に物流業のお客様向けへの展開を検討中です。
このような展開方向性に合致する企業様からのご応募に期待しています。
豊田さん 今回は、募集テーマを4つ設定しました。事前説明会とは少し順番を変えて、N.mobi の現状と期待をお伝えします。
1つ目は、地方自治体です。地域を巻き込んだカーボンニュートラルの推進等の目標・計画を持つ自治体に対して、EV普及率を向上させるサービス共創を想定しています。例えば、「カーボンクレジット」の創出など新たな収入源の創出に貢献できるアイデア、カーシェアの利用頻度に応じた地域のデジタル通過ポイントを付与するサービスを提供するなどのアイデアの実現などをめざすようなパートナーです。
2つ目は、不動産業です。特にマンションデベロッパーや管理組合の方向けにEVカーシェアをご提供し、入居者様の移動を助けるだけでなく、よりコンシェルジュのように日常の用事を担えるサービス共創を求めています。例えば、車両の整備や保険のほか、カーシェア予約が込み合う際には代替案の提案ができるとよいなと思います。
3つ目は観光業で、リゾートホテル等の滞在先にEVカーシェアを設置し、地域内に点在する観光地への旅行者のアクセスを高める(周遊促進)ようなサービス共創先を探しています。単にEVカーシェアを設置するだけでなく、各地域の観光消費を促進するような仕掛けや仕組みを作るべく、「付加価値」にあたるアセットをお持ちの企業様に応募頂きたいです。
4つ目は運輸業で、特に物流業界を想定しており、配送業務の効率化や、社員の安全性向上に資するサービス共創を求めています。配送業務の効率化と脱炭素化の両立が今後の課題になってくると予想されますが、ここに我々の充電制御機能をもって貢献したいと考えています。特に域内配送において既にお客様の課題解決に取り組まれている企業様に応募いただければ幸いです。
これらの業界について、NTT西日本には営業の数をご期待頂けると思います。「1.自治体」、インターネット回線を提供している「2.不動産」、観光促進という文脈で自治体とも近しい「3. 観光業」については、営業網を特に強く活かせると考えています。「4. 運輸業」については、「配送」をご支援するサービスは新たな提案となりますが、既存のお取引先様も多くいらっしゃいます。
いずれのテーマにおいても、積極的なご応募お待ちしております。
洞桐さん 応募企業へのメリットについてですが、大きく4つあります。
一つ目は採択企業のプロモーション支援です。今回のプログラムで採択された企業名や共創内容について、NTT西日本グループからプレスリリースを発出させていただきます。NTTグループによる厳正な審査を経て、共創パートナーに採択されたとなれば、採択企業の知名度・信用度向上に少なからず貢献できるのではないかと考えております。
二つ目は共創事業検討(PoC(Proof of Concept)等)にかかる費用を、NTT西日本グループから提供させていただくことです。創業して間もないスタートアップ企業が採択された場合、限られた経営資源をどこに投入するか非常に重要な判断になると理解しています。経営資源の中でも、資金面のサポートをさせていただくことで、採択企業の成長を手助けしたいと考えています。
三つ目は営業支援です。我々NTT西日本は30府県で事業を展開しております。これらの営業エリアには各地にフィールドセールスがおり、採択企業とともに作り上げた共創サービスやそれに付帯するサービスの、セールスサポートを行い、採択企業の収益増加にも貢献できるのではないかと思っています。
最後に四つ目ですが、採択企業に対しては、NTTグループCVCからの出資検討をさせていただきます。採択後はPoC等を通じて、事業化・サービス化検討を目指していくことになりますが、サービス化がゴールではありません。本プログラム終了後も弊社との事業共創に閉じずに、自社事業の拡大をさまざまな面で支援できる体制を整えることで、より安心して今回のプログラムにも望んでいただきたいと考えております。
豊田さん まず現状として、サービスがまだ完成形ではないという点があります。あと一歩お客様に寄り添いたい。
主要機能別に見ると、
1)EVカーシェアリング機能について、導入すればすぐ使えるパッケージとして導入先の自治体様・企業様の反応はよいですが、利用者の目線に立てば「エコ」という価値はあるものの、「使う人は使うし、そうでない人は使わない」現状に留まってしまっている点が課題と言えます。地域企業との連携手段等、より多くの方に「使ってみたい」「乗り続けたい」と思ってもらえる仕掛けを未来のパートナー様に期待したいです。
2)充電制御機能については、導入先となる企業様、利用者様の「使い勝手」の点でまだギャップがあります。例えば、ある運輸業の企業様では配送に用いるトラックを夜間に自宅近くに駐車する運用をされており、夜間充電をするには「①契約駐車場に充電器を設置する、②事務所に返却する運用に変える、③経路充電を主に運用する」が選択肢となりますが、①②は企業様側で困難、③ではN.mobiの充電制御を導入する意味がなくなってしまう。ご紹介したケースはあくまでも一例ですが、提供の仕方を業界や個社ごとの利用実態にマッチするよう改善する必要があると考えており、各業界でプロダクト導入実績のある企業様の持つ試行錯誤の履歴(ノウハウ)に期待したいです。
今回の共創プログラムでは、各業界別の募集とさせて頂いております。採択に向けては、これまで申し上げたようなポイントについて、弊社との親和性を①共創シナジー、②市場優位性、③実現性の観点で評価させて頂きます。各分野に精通したパートナーと連携・開発を進め、個々のお客様によりマッチするソリューションへと進化を図ることで地域のEV普及を促進したいですね。
洞桐さん QUINTBRIDGEが大切にしている考え方として、「Self-as-We」がございます。今回のプログラムに当てはめると、NTT西日本単独では成し遂げられないことも、ともに挑戦いただける企業の皆さまとであれば、実現できる可能性があると考えております。業界・業種・規模に関わらず、今回の募集テーマや目指す世界観に共感いただき、NTT西日本グループとともに社会課題の解決と未来社会の創造を実現したいという強い想いを持った企業の方にご応募いただきたいと考えております。
そのうえで、採択においては、共創のシナジーが期待できるかどうかが特に重要なポイントだと考えています。また、ターゲット市場の魅力度、顧客課題やニーズを正確に捉えているか、提案いただいたサービスに実現性があるか等も一つの評価ポイントとなります。
チームや体制についても評価ポイントの一つとはなりますが、企業規模が小さいからといって一概に不利になるわけではないという点もお伝えしたいです。例えば、創業間もない企業でも、特許や知財等の技術的優位なアセットを持たれていたり、、業界に精通している・ノウハウを有しているメンバーがいる場合や、将来的な成長が見込める場合にはの採択可能性は十分ありうると考えております。採択パートナー企業の数については、ピッチ審査の結果を見て判断させていただきます。
洞桐さん これまでに実現した共創事例として、NTT西グループと株式会社Specteeによる「Spectee Pro for elgana」(スペクティプロ フォー エルガナ)があります。こちらも同プロジェクト「Business Match-up!」にて、2022年9月にNTTビジネスソリューションズ株式会社が提供するビジネスチャット「elgana®」をテーマに共創パートナーを募集しました。そこで採択された株式会社Specteeとの共創で、災害現場の情報をリアルタイムに収集・共有できる自治体向け防災DXサービス 『Spectee Pro for elgana』を、2023年4月20日にサービス提供開始しました。
【共創事例インタビュー#1】NTT西グループ × 株式会社 Spectee 「Spectee Pro for elgana」
洞桐さん 私自身が意識して取り組んでいることとしては、事業部門の巻き込みと密なコミュニケーションです。今回の例でいえば、「N.mobi」をテーマとした「Business Match-up!」の開催が決定し、募集テーマの検討段階から、事業部門との間で定例的な打合せの場を設けて進めておりました。プログラムの企画運営にあたって、我々イノベーション戦略室が一定リードしながら進めていくものの、事業部門の意思を尊重し、主体性を持って取り組んでいただけるよう、ワークショップ等も活用しながら進めるように工夫しました。今回のプログラムの運営においては、N.mobiチームの皆さまが、自分たちのWillをしっかりと表明いただけたこと、事業部門で決めなければならないことは、決められた期間の中で確実に決定いただけたこともあり、非常にやりやすかったですね(笑)
洞桐さん そうですね、スタートアップ企業と大企業がそれぞれ異なるKPIを持っているため、共創を進める際にそれらをどのように調整していくかという課題はあります。例えば、海外展開を目指すスタートアップ企業と、「N.mobi」チームのように地域密着型で進めていく企業とでは、めざす未来が大きく異なることがありますよね。
こうした違いを解決するために、書類選考やピッチ審査などを通じて、双方の方向性や価値観が一致しているかどうかを見極め、共創プログラムがスムーズに進むように意識しています。
洞桐さん 過去のテーマも含めてですが、「Business Match-up!」には、NTT西日本グループとして、今後本気で伸ばしていきたい、注力していきたい事業をテーマとして選んでおります。今回の共創プログラムを通じて、新しいサービスを生み出し、NTT西日本グループならびに共創パートナー企業の企業価値をさらに伸ばしていきたいと考えております。
豊田さんの言葉にもある通り、「あと一歩で素晴らしいものができる。」と感じています。「N.mobi」はまだ未完成。その「あと一歩」をともに創り、世の中に素晴らしいサービスをお届けしましょう!!
豊田さん この「Business Match-up! 」での共創で、「脱炭素化」という社会課題解決の突破口となるような勢いのあるサービスをぜひ一緒に生み出しましょう!ご応募お待ちしております。
QUINTBRIDGE 2階で、「N(N.mobi)ポーズ」をする豊田さんと洞桐さん。
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