石川県能登町の全小学校でNintendo Switchを活用した学習モデル「山鹿モデル」を展開
  • プログラムレポート

石川県能登町の全小学校でNintendo Switchを活用した学習モデル「山鹿モデル」を展開

公開日:
2024.6.24

2024年1月1日、最大震度7の地震があった石川県・能登町の全小学校で、プログラミング学習にNintendo Switchを活用した授業を実施しました。

西日本電信電話株式会社ソーシャルプロデューサーであり、熊本県山鹿市の山鹿創生アドバイザーを務める中島  賢一氏が取り組む本プロジェクト。今回の取組は、小学校のプログラミング学習を「ゲームで楽しく」、主体性と地域愛を育む学習プログラムとすることを目的に、熊本県山鹿市にて全国初で展開しているNintendo Switchを活用した学習モデル「山鹿モデル」を2024年3月4日・5日の二日間に渡り、石川県 能登町の全小学校で実施したものです。

|「山鹿モデル」とQUINTBRIDGE

本事業は QUINTBRIDGEの学ぶプログラムであるゼミ【I Lab.】にも採用され、中島がメンターとなり、QUINTBRIDGEの会員であるゼミ生は6ヶ月に渡り「山鹿モデルの全国展開に向けた事業開発」に取り組み、熊本県山鹿市へ訪問し市長へプレゼンするなどの活動を行いました。

▼熊本・山鹿市長へ”ガチ”プレゼン!【I Lab.】エンタメ×地域創生「ガチ事業開発ゼミ」レポート
https://www.quintbridge.jp/about/library/detail/202402032216.html

▼【ILab.ガチゼミ】 熊本市長へ”ガチ”プレゼン結果発表!レポート×インタビュー
https://www.quintbridge.jp/about/library/detail/202402042052.html

|石川県 能登町でNintendo Switchを活用した学習モデル「山鹿モデル」を展開した背景

2024年1月1日、石川県を襲った最大震度7の能登半島地震。広範囲で家屋倒壊や津波被害が確認され、現在も避難所生活は続き、上下水道が通っていないなど復興が進まぬ現状があります。

そんな石川県能登町で、いまなぜ「山鹿モデル」を能登町でするのか

任天堂の協力の元、中島氏、能登町 小川 勝則氏、石川県能登高等学校魅力化プロジェクト 地域・教育魅力化コーディネーター 木村 聡氏といった協力者の上で実現した今回の取り組みの背景を、中島氏へインタビューしました。

左から能登町 小川 勝則氏、NTT西日本 ソーシャルプロデューサー中島氏、石川県能登高等学校魅力化プロジェクト 地域・教育魅力化コーディネーター 木村 聡氏


|今回の取り組みの背景を教えてください

中島氏
ゲームを活用した学習モデル「山鹿モデル」は、能登町でも昨年の8月から導入に向けて打ち合わせもさせていただいていました。また、能登高校魅力化コーディネーターの木村聡さんとは能登高校におけるeスポーツの活動についてサポートもさせていただき、つながりがありました。

そして地震から少したっての1月13日。「こんなときこそスイッチのプログラミング学習ができないだろうか。」と能登町役場の小川さんから連絡があったんです。連絡を受けて、小川さん、木村さんと動き出しました。途中から能登町 青木秀勝さんやNTT西日本北陸支店の沢本さんにも入っていただき、能登町すべての小学校でSwitchを使った授業を実施すべく、山鹿市、山鹿市立山鹿小学校にも協力していただき、山鹿小学校6年生が作ったゲームを能登町のSwicthにインストールし、山鹿小学校の子どもたちの応援メッセージ動画を準備し、3月4日から5日にかけて巡回授業をさせていただきました。

|「山鹿モデル」を能登町でする意義について

中島氏             
私は、「エンターテインメントで地方創生」をNTT西日本以前からのライフワークとしてやっていたのですが、それと能登の皆さんの考えは非常に合ってるなと。エンターテインメントというお仕事は昔は都会にしかできないという印象がありましたが、今は地方でもできるんです。多様性のある仕事だけじゃなく、テクノロジーも含めて、能登の若い人達が、能登でも働ける。そういったものとeスポーツの親和性はかなり高く、まさに山鹿市の『e-City YAMAGA プロジェクト』の構想とそっくりなんです。同じ問題を抱えていますよね。例えば、少子高齢化。働き手を失い、町の活力が失われ、税収が減少し、そうすると財政が逼迫して地方自治体というのは衰退するしかない。その結果、行政同士が合併し、合併したらまた疲弊する。そうなると大都市だけに人が集まり、周りが過疎化が進む現象は止められない。

そういう問題を抱えている者同士が、若い力を育てていくために、eスポーツやゲームというエンタメに着目したという点では、山鹿も能登も全く同じです。

そこで山鹿モデルが能登にも適用できるんじゃないかと協議を続けていたところ、地震で一気にそれが加速しました。今こそそれをやるべきじゃないかと。復興など大変な状況の中でしたが、地震という非常に大きな災害を受けた子供たちの笑顔のためということで、このプロジェクトが始まりました。

|能登町 宇出津小学校にて贈呈セレモニー

2024年3月4日、贈呈セレモニーに向け、NTT西日本北陸支店と、山鹿市の小学生が作ったゲームをインストールした35台のNintendo Switchを能登町へ運びます。体育館は避難所として使われているため、音楽室で実施。簡易シャワーなどが設置されているなど大変な状況の中、子供達の笑顔のためとご協力いただきました。

贈呈セレモニーは、石川県鳳珠郡能登町宇出津にある宇出津小学校にて行い、5年生、6年生が出席してくれました。

NTT西日本 中島氏から、能登町教育委員会 教育長 眞智 富子氏へ贈呈。Switchを見つめる児童の皆さんの目が輝きます。

|授業では児童たちが大興奮!笑顔あふれる時間に

贈呈式のあとは、二日間に分けて能登町の全小学校(宇出津小学校、小木小学校、柳田小学校、鵜川小学校、松波小学校)の6年生・5年生へ授業を実施しました。

宇出津小学校の皆さんと”中島先生”。

教室入り机に並べられたスイッチを見て、歓声が上がります!

「ゲームできるの?」「これもう触っていいの?」とやる気満々の児童たち。

まずは、授業説明。皆さん、福岡eスポーツ協会の会長を務める中島氏の自己紹介に興味津々です。

熊本県山鹿市の山鹿小学校に協力いただき、山鹿小学校6年生が作ったゲームを行います。山鹿小学校の皆さんからは、動画にて、応援のメッセージと歌が贈られました。

 

「小学生が作ったの?すごい!」

「絶対クリアしよ!」

とさまざまな反応です。見守っていた担任の先生によると、

「みんないつもよりはしゃいでいますね。ゲームが得意な子が積極的になったり普段と違う姿が見れて新鮮です。」とのこと。

ゲームは山鹿市のことを紹介する内容になっており、特産の栗にまつわるもの、観光地をステージに見立てたものなどがさまざま。

ゲームを作るということ、そしてゲームに関わる仕事についても学びます。「山鹿モデル」では、ゲームを作る中でプログラミング思考を鍛え、「山鹿市」について紹介するため地域について調べ、知り、地域愛を育みます。地域のことを知るために、家族や知人に質問したりと自然とコミュニケーションも生まれます。

ゲームをプレイすると、思ったより難しいと大騒ぎ!誰が一番にクリアできるか勝負です!普段からゲームを楽しんでいる子も多く、操作を聞く前にどんどん進める子もたくさん。自然と会話が生まれます。

笑顔あふれる教室に、大人にも笑顔が伝染します。取材班、先生、教育委員会の皆さん、能登町の職員、保護者も参加して、一緒にゲームをプレイ!ゲームの前では児童たちが先輩。「先生ここはこうするんだよ!」と活き活きと教える様子が印象的です。

先生も”鬼むず”なゲームをクリア!子供たちの闘志に火をつけます!

中には、震災でゲーム機が壊れてしまった方もいました。そんな中、「学校でスイッチに触れることが嬉しい!」とこっそり教えてくれました。

授業の最後には、

「同じ学年なのに、これを作れてすごいなと思った。」

「ちゃんと山鹿市のことを取り入れて、ゲームにして、ちゃんと面白いのはすごい。」

「自分にはない発想のゲームで参考になった。ゲームを作ってみたい。」

と話していただきました。

授業終わりに取り囲まれる中島氏。ゲームの話で盛り上がります!

|能登町の小学生と先生の感想

授業を受けた小学生から感想を聞きました。

「特売所のゲームが楽しかったです。クリアしました!いつもの授業ではゲームを触れないけどゲームができておもしろかったです!」(宇出津小学校6年)

「普段はChromebookにしか触れないから面白かったです。ゲームは難しかったけど、楽しかったです!」(宇出津小学校6年)

「アスレチックのゲームが楽しかったです!スイッチのゲームを作る仕事をしてみたくなりました!」(鵜川小学校6年)

宇出津小学校6年生の担任をしている上平将士さんは、

「みんな普段と目の輝きが違いました。授業中の発言の量もいつもより多く、普段積極的に授業中につぶやきがない子も多く話していたのでゲームというツールは有効だなと思いました。ほとんどの子はゲームが好きなのでいい感想をたくさん聞けそうです。普段ゲームが好きというタイプではない子も楽しそうにしていたので、話を聞くのが楽しみです。」と話しました。

鵜川小学校5年生の担任をしている吉村春奈さんは、

「プログラミングの授業が導入され、学校の先生としてもどうすればいいんだろうと考えることもありますが、こんな風に楽しんで組み上げていくという方法もあるんだなと思いました。子供達の様子を見ていると、楽しみながら『やってみたい』と感じている子も多く、キャリア教育に繋がる要素もあり素敵な取り組みだと思いました。」と話しました。

|NTT西日本 ビジネス営業部 地域活性化推進室 室長 沢本 佳久氏 より

今回の取り組みとNTT西日本北陸支店との関わりについて、NTT西日本 ビジネス営業部 地域活性化推進室 室長 沢本 佳久氏へお伺いしました。

|今回の取り組みについて

沢本氏 
私たち北陸支店は、2022年3月に能登町とICTで地域課題を解決する連携協定を結びました。その取り組みの一貫で、NTT西日本の能登ビルに『まちなか鳳雛塾(※1)』に入っていただくというのが最初にありました。ただ、それだけじゃ面白くないよねと、地域の若い人達とNTT西日本で一緒に何かできないかと話していたんです。それで、eスポーツがいいんじゃないかということで、その塾にゲーミングPCを入れてみて使っていただくなどで、能登町とは繋がりがありました。

そういったeスポーツの活動を通じた中島さんとの付き合いの中で、取り組まれている今回のゲームを活用したプログラミング学習についてお聞きし、能登町でもできるんじゃないかと話をしました。そこから中島さんに能登町にまた来ていたいただいて、取り組みについて能登町の皆さんにもお話いただき、今のお話に繋がりました。

教育は楽しみながらするのがいいのかなと思っています。今までと同じような形式ばった教育だけじゃなくて、eスポーツという新しいものを取り入れながらやったらもっと面白い教育になるんじゃないかと試してみたかった。その中で、北陸支店でもやれないかと思い、今に至ります。

|授業の感想

昨日今日と授業を見て、「やっぱりやって良かった。」というのが率直な感想です。なかなか教育の領域に入ることはハードルが高く、色々なところで「その取り組みいいね。」と言ってもらえるのですが、進められていないのが現状です。ただ、授業をやってみて、先生に直で見てもらえることがすごくいいなと感じましたし、子供たちの素直な感想や喜びも見れたので、今後も進めていきたいなと思いました。

※1         まちなか鳳雛塾:能登高校魅力化プロジェクトの一環であり、能登の子供たちの教育を支える塾

|能登町の皆さんのコメント

(左)石川県能登高等学校魅力化プロジェクト 地域・教育魅力化コーディネーター 木村 聡氏
(右)能登町 地域戦略推進室 室長  小川 勝則氏

|今回の取り組みの背景・思い

小川氏                
令和5年8月、NTT西日本様との連携協定の実現に向けて、NTT西日本様のご協力のもと能登町においてeスポーツイベントを開催いたしました。この時に、NTT西日本 中島様より、熊本県山鹿市の任天堂Switchを使ったプログラミング的思考の取り組みが山鹿市立小学校で行われていることを紹介いただきました。この時に、「能登町の小学校でも実現できればいいなぁ」と思ったのがきっかけです。

令和6年能登半島地震により、非日常を過ごす児童たちに、任天堂Switchを使った熊本県山鹿市の取り組みを今こそ、今だからこそ実現したいとの思いから、NTT西日本金沢支店様はじめ、中島様に相談して実現したものです。

|授業の感想

小川氏                
授業冒頭で、任天堂Switchを持ってる人?との問い合わせに、全員が手を挙げたように感じました。今回、地震災害時において、約2ヶ月間身に染みて感じたことは、普段使いしている物、事が、日常時も非日常時も隔てなく使えることです。そういった意味では、普段使っているゲーム機およびソフトが、授業で、プログラミング的考え方の教材となることに、授業と日常との隔てがなく、児童たちに受け入れられたように感じました。

|今後の展開・期待すること

小川氏                
今、能登町は令和6年能登半島地震から復旧から復興、そして日常へと向かっています。先人から受け継いだ能登の暮らしを受け継ぐ町に、児童のプログラミング的思考のあり方は必要だと思います。
今後は、山鹿市様のモデルを参考に、震災を体験した能登町が、新たなモデルとしてアップデートし、NTT西日本様、山鹿市様らと関係企業、関係市町、そして関係人口の関係として、能登の暮らしを継続して受け継いで行きたいです。

|NTT西日本 中島 賢一氏のコメント

ー授業の感想をお聞かせください。

子供は強いですね。子供って遊びの天才で、何にもない原っぱでも、親に連れられたどんなつまらない買い物のショッピングモールでも、些細なことで遊ぶんです。「この環境で遊ぶ?」という驚くような遊びを生み出しますよね。それを学びの中に持っていったとき、彼らは水を得た魚のようにいとも簡単に吸収して、自分のものにしている。自分たちが作ったゲームじゃないのに、あっという間に馴染んでいる。子供は天才だなと改めて思いました。この子たちはきっと面白いゲームを作るだろうと感じました。都会の子も田舎の子も関係なく、面白いゲームを作れると思います。

ーゲームと地方創生の可能性

人間の経済圏でいうと、地域で経済を考えたり、交流人口も旅行会社が企画するような旅行でない限り、人は縁がない地域に行き辛かったと思います。でも、旅行をしなくてもその町を知ることがゲームを通じてできる。今後はこういった地域交流を、ゲームを通じて積極的に行うことがさらに有効に活用されるんじゃないかと思います。

|『山鹿モデル』協力隊の募集について

今回の能登町での取り組みも含めて、山鹿モデルを取り入れる際に、

・ともに授業をしてくださる方、

・授業のカリキュラムを作るところに協力いただける方

・教育で培ったものを地元にどうやって活かすのか、次の展開を考える人

こんな方に、ぜひ参画して欲しいです。

例えば、今回でいう石川県能登高等学校魅力化プロジェクト 地域・教育魅力化コーディネーター 木村 聡さんみたいな方ですね。木村さんは『まちなか鳳雛塾』を行政の公営の塾と言いながら、行政ではなかなかできないところに手を伸ばしてやられています。プラスワンの教育をしたらどうなるのかというような、次のステップに進められるような企画ができる協力者が欲しいです。

ぜひ協力したいという方はQBコミュニケーターまでご連絡ください。

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