【ピッチプログラム】第一回 Shining Startup SEEDを開催しました!
  • プログラムレポート

【ピッチプログラム】第一回 Shining Startup SEEDを開催しました!

公開日:
2025.12.5

Shining Startup SEEDとは?

・資金調達をめざす注目のシードスタートアップ5社によるピッチ&QA

・関西や東京など全国から集結する5社の投資家(VC・金融機関)とリアルに繋がれる機会

・登壇スタートアップ × VC・金融機関の個別メンタリング(一般には非公開)

注目のシードスタートアップ5社がリアルピッチ

登壇企業 5社のプロフィールはこちら
URL
https://www.quintbridge.jp/program/detail/202508071520.html

 
今回は、ピッチのコメンテーターとして、VC・金融機関5社に参加いただきました。

       

■登壇企業 Yellow Duck株式会社 代表取締役 中山 繁生

海の再生可能エネルギーを利用した発電技術の開発

Yellow Duckは、浮体式波力発電に取り組む海洋エネルギーのスタートアップです。未活用の海の力を電力に変え、持続可能で安定的なエネルギー社会の実現をめざした、海の波を利用した浮体式波力発電の開発に挑んでいます。

太陽光や風力は設置適地の枯渇が課題となる中、「陸がだめなら海がある」と発想を転換。浮きを海に浮かべ、その上下運動で発電するシンプルな仕組みを検証し、大阪・富山・福岡での実証実験では天候や昼夜を問わず安定した発電が確認されました。直径3mの装置で1世帯分の電力をまかなえるほか、大型モデルを2km四方に展開すれば原発1基分の発電量に相当。

現在は神戸や長崎などで自治体や企業と連携し実証実験を進め、2030年に向けて量産化・大型化を計画しています。広大な日本の海を活かし、環境と経済の両立をめざす技術として注目を集めています。

VCからは塩害や台風リスク、発電効率や設置場所に関する質問が寄せられました。また、Yellow Duckは浮体式の強みやコスト面での展望を語り、エネルギーあふれるトップバッターのピッチとなりました。

 URL:https://yellow-duck.jp/

■登壇企業 株式会社モッチハック 代表取締役社長 CEO 瀬口 拓

バーチャルクリエイターを、推し活から「メディア」としての存在へ。

モッチハックは、3Dイマーシブサウンド技術『imavo™︎』を軸に、VTuberやライブ配信者の新たな表現を支援。音による没入体験を広げ、個性が活躍できる未来をめざします。
同社は、VTuberをはじめとするバーチャルクリエイターに着目し、彼らとファンの温かなコミュニケーションを活かした新しい広告体験を構築。独自の3D立体音響ソリューション「imavo™」を活用し、まるで隣にいるような存在感を生み出すことで、推し活を広告価値へと転換。従来のフェイクニュースや炎上リスクに縛られた広告から脱却し、自然で応援されるプロモーションの仕組み化をめざします
事業モデルはクリエイターと企業のマッチングを軸に、ファンコミュニティやIPプロデュースと組み合わせた循環型。すでに大手企業との実証を進めており、バーチャルな存在=「Metaピープル」が社会で活躍できる未来を描いています。
VCからは、競合状況や事業の軸、ターゲットVTuber層、広告の独自性などが問われ、モッチハックはVtuberとネットワーク型の関係構築をしていく強みや、自然な広告体験で差別化をめざすと説明しました。

URL:https://yellow-duck.jp/

■登壇企業 Kicrew株式会社 代表 佐伯 あずさ

AIを活用したユーザーリサーチエージェント『Kicrew』

Kicrewは、従来時間とコストがかかったリサーチを数時間で完了するAIエージェントを提供。即時のユーザーインサイト獲得を通じ、働く人が本業に集中できる社会をめざします。
AIを活用したユーザーリサーチエージェント『Kicrew』は、従来3か月・数百万円かかっていた定性リサーチを自動化。AIがリサーチ設計からインタビュー、深掘り質問、分析までを一貫して実施し、最短3日・費用10万円前後で完了可能です。

これにより、人手不足や属人的作業による遅延やコスト増を解消し、商品開発や意思決定のスピードと精度を大幅に向上させます。さらに、位置情報や個人情報保護など大手企業向けの機能も備え、効率的かつ高品質な定性調査ソリューションを提供。

ユーザーインサイトの即時獲得を通じ、働く人が本業に集中できる社会の実現を目指します。現在、複数企業でのトライアルも進行中で、実用化に向けて準備を進めています。

VCからは、マルチモーダル分析の対応範囲やモニター集めの方針、課題の優先度について質問があがり、現状の文字ベース分析と外部パネル活用について説明。スピード向上を最重要課題と回答しました。

■登壇企業 マイクロアルゲミー株式会社 代表取締役 貞松 久人

新たな藻類培養装置(バイオリアクター)による、人類社会への革新的変革の実現

マイクロアルゲミーは、独自の藻類バイオリアクターで高い生産性と安定性を実現。藻類培養をCO2削減装置に昇華させ、CCUや地方創生の課題解決をめざすバイオテック企業です
微細藻類を活用した革新的CCUCO2有効活用)技術を展開。

従来のCO2地下埋設(CCS)では負の遺産リスクがある一方、同社の藻類培養装置に排出CO2を注入すると、光合成で酸素に変換し、年間10t規模のCO2固定が可能です。

得られる藻類バイオマスからは、高額医薬原料フコキサンチン(1g20万円)を安定生産でき、がん・糖尿病・アトピーなど社会課題解決にも貢献。装置販売と生産サポートが収益源で、地方展開によりCO2削減、高収益、新規事業・雇用創出、健康寿命延伸、医療費削減など多面的効果を狙います。

 さらに、藻類残渣は家畜・養殖魚用資源としてブランド化可能で、自給率向上や需要増加にも対応。ターゲットはCO2削減に関心のある大手石油・電力・製鉄・ゴミ焼却企業のほか、新規事業を求めるあらゆる企業です。

 投資家からは、フコキサンチンの実績や収益化の可能性、培養装置のビジネスモデル、許認可の必要性について質問がありました。それに対し、米国では既にダイエットサプリとして販売されているが供給が不安定であり、藻類培養による安定供給が可能であること、収益は装置販売と生産サポートによること、許認可は基本不要であることを回答。

クリーンエネルギー活用と藻類培養を組み合わせることで、地方に多面的な産業創出を実現し、世界展開をめざすマイクロアルゲミーのピッチ。今後の展開に大いに期待が高まります。

■登壇企業 株式会社古殿研究所 共同創業者 取締役 大谷 諒馬

オフィス向けパーソナライズドリンクサーバー

古殿研究所は、オフィス向けのパーソナライズドリンクサーバー「DRIGGER」を開発。体調やニーズに合わせて栄養素や味を調合し、手軽に最適な水分・栄養補給をめざします。
株式会社古殿研究所は、近畿大学発ベンチャーで、オフィス向けパーソナライズドリンクサーバーを開発。

古殿研究所は、オフィス向けのパーソナライズドリンクサーバー「DRIGGER」を開発。体調やニーズに合わせて栄養素や味を調合し、手軽に最適な水分・栄養補給をめざします。
株式会社古殿研究所は、近畿大学発ベンチャーで、オフィス向けパーソナライズドリンクサーバーを開発。

古殿研究所は、オフィス向けのパーソナライズドリンクサーバー「DRIGGER」を開発。体調やニーズに合わせて栄養素や味を調合し、手軽に最適な水分・栄養補給をめざします。
株式会社古殿研究所は、近畿大学発ベンチャーで、オフィス向けパーソナライズドリンクサーバーを開発。

なぜ関西でシードスタートアップのピッチイベントを?

開催の狙いをQUINTBRIDGE運営事務局へインタビュー

        

過去17回に渡りShining Startupを開催してきた中で、今回はシード期に焦点を当てた「Shining Startup SEED」が新たにスタート!開催の背景について、NTT西日本 イノベーション戦略室の洞桐さんにお話を伺いました。

― 「Shining Startup SEED」を立ち上げた背景を教えてください!

洞桐さん         これまでのShining Startupに登壇いただいたスタートアップの皆さんは、すでに大企業との共創実績があったり、自社単独で売上をしっかり立てているような、力強い企業が多かったんです。QUINTBRIDGEを利用いただいている方々の中でも、特にイベント登壇の場ではそういった強いスタートアップが中心で、登壇経験が豊富な方々が多いです。

一方で、もう少し小規模なビジネスを営む中小企業や個人起業家の方も数多く利用されています。そうした層と「実績豊富なスタートアップ」の中間に位置する企業の利用は、まだまだ十分に広がっていないと感じていました。その中間層に光を当てるような登壇機会をつくりたい、という思いが今回のピッチプログラムをスタートさせた背景にあります。

また、QUINTBRIDGEでは3年間で115件もの共創実績が生まれています。その中には出資や融資に繋がった事例も含まれますが、件数としてはまだ多いとは言えません。今後はこの数をさらに伸ばしていきたいと考えています。

シード期は、スタートアップにとってちょうど最初の資金調達に挑戦するフェーズです。そうした企業と、投資家やVC、さらに地方銀行などの金融機関をつなぐ接点を提供することで、出資や融資に繋がるきっかけを生み出せるのではないか。そうした狙いから、新たに「Shining Startup SEED」を立ち上げるに至りました。

― 参加されるシードスタートアップの皆さんは、どのように集められたのでしょうか。

洞桐さん         第1回の開催に関しては、基本的に私たちからお声がけをさせていただきました。

今回は、私たちが選んでお願いをした形でしたが、2回目以降は少し仕組みを広げていきたいと思っています。例えば「資金調達を考えているので登壇したい」と自ら手を挙げていただけるようなオープンな応募形式を取り入れることで、より多様なスタートアップに参加いただける場にしていきたいです。

― 投資家や金融機関とスタートアップがつながるイベントは各地で開催されていますが、「Shining Startup SEED」に参加することで、スタートアップ企業にはどのようなメリットがありますか。

洞桐さん         ひとつは、関西での機会提供です。東京では投資家とスタートアップが出会えるイベントが数多くありますが、関西ではまだまだ少ないのが現状です。そうした中で、リアルな場で出会えることが本プログラムの大きな価値だと考えています。

次に、完全クローズドな空間で投資家と11の個別メンタリングを受けられる時間を設けている点です。第1部では4分間のピッチと4分間の質疑応答を行い、その後のネットワーキングを経て第2部に移り、個別メンタリングを実施しました。

オープンな場ではどうしても周囲に会話が聞こえてしまい、深い質問や出資を見据えた具体的な議論はしにくい面があります。しかし今回は会議室を貸し切り、1社ごとに約10分間、投資家や金融機関の方から直接フィードバックや助言を受けられる仕組みにしました。

ピッチイベントでありながら、資金調達や事業成長に直結するリアルな学びと接点を得られる点が、Shining Startup SEEDならではのユニークなメリットだと考えています。

― 第1回を終えられた感想をお聞かせください!
 参加者の雰囲気や、印象に残ったことはありましたか。

洞桐さん         まず、参加者の顔ぶれが普段より、投資家の比率が大きかったことが印象的でした。元々参加いただいていたVC・金融機関以外にも、会場でピッチを見に参加いただいた方、質問いただいた方に、投資家の方が多かった印象で、そこは一つ手応えを感じたところであります。

もうひとつ印象的だったのは、ピッチ時間を従来の7分から4分に短縮した点です。限られた時間の中で、自社事業やサービスの魅力を投資家に伝えるために、参加者は情報をコンパクトにまとめつつ勢いそのままにプレゼンを行う。そこが、新たな面白さや熱量を生む場になったと感じています。
 

 ― 登壇者や参加者からは、どんな感想がありましたか。

洞桐さん         参加VCや参加スタートアップへのヒアリングでも、満足度の高い回答を多くいただきました。主催者、参加者ともに非常に手応えを感じられる、第1回として成功したイベントになったのではないかと思っています。

イベント前には、登壇者に2回ほど「壁打ち」と呼ばれるメンタリングも実施しました。スタートアップの皆さんはピッチ資料(ピッチデッキ)を持参していましたが、4分間という短い時間で自社の魅力をどう伝えるか、投資家にどのように見せるかという観点でアドバイスを行いました。

メンタリングは私自身と外部支援機関が担当し、130分、2回で合計1時間ほど。登壇者からは「事業を他者にうまく伝えるための流れやスライド構成をブラッシュアップできた」との声が多く、好評を得ています。

また、今回は関西のスタートアップ、関西のVC、関東のVCが混ざった形で登壇・参加しました。関西や関東に限定したイベントでは既に顔見知りのVCが多く、新しい出会いの機会は限られがちです。しかし今回のようにクロスでの交流が可能となり、新たなつながりや学びが生まれました。

特に、東京のスタートアップの実力や、関東のVCの水準の高さを直に体感できた点も参加者から高く評価され、「普段得られない視点で質問やアドバイスを受けられた」との声が多く寄せられています。
 

― 登壇者同士の交流についてはいかがでしたか。

洞桐さん         登壇者同士の交流も非常に活発でした。通常のShining Startupより、今回は登壇者席を近くに配置してみたのですが自然と会話が弾んでいました。ネットワーキングタイムが一区切りした後も、登壇者同士で30分以上話し込む様子があって。シード期のスタートアップにとって、同じフェーズで挑戦している仲間との横のつながりは強く求められていたのだと感じています。

登壇の機会にとどまらず、新たな仲間と出会える交流の場にもなったことは、今回の大きな成果の一つでした。

― 洞桐さんが、特に印象に残った登壇者の方はいましたか。

洞桐さん         どの登壇者の方もそれぞれ強い印象を残してくださいました。総じて、今回ご登壇いただいたスタートアップのレベルが非常に高かったです。初めての資金調達でありながら、ピッチの完成度や資料の仕上がり、サービスの内容までしっかり整っており、「質の高い企業が揃った」と強く感じました。

その中でも、トップバッターを務めたイエローダックさんのピッチが印象的でした。ピッチ慣れされていて、流暢かつ説得力ある発表で、投資家の方々にも非常に分かりやすくメッセージを届けていました。

イエローダックさんが冒頭を飾ったことで、その後に続く登壇者の皆さんも自然と熱量が高まり、全体の雰囲気がぐっと引き締まったように思います。結果として、イベント全体を勢いよくスタートでき感謝しています。

― 今後の展望についてお聞かせください!

洞桐さん         Shining Startup SEEDは、初めての取り組みということもあり、ピッチ時間やメンタリング時間などの設計をまずは試験的に実施しました。実際に運営してみると「もう少し長くてもよい」、「ちょうどよかった」など、さまざまな意見をいただいています。今後は、そうしたフィードバックを踏まえて、全体のプログラム設計をさらに磨いていきたいです。

 次回は 12月11日(木)の開催を予定しています。テーマは特定せず幅広く募集し、関西と関東のスタートアップを交え、業種はしぼらずに行う予定です。今回の良さを引き継ぎつつ、さらに新しい出会いや学びが生まれる場にしていきたいと思います。

 また、QUINTBRIDGEの会員であるスタートアップにも継続的に登壇枠を用意する予定です。東京のスタートアップと肩を並べてピッチに挑戦し、資金調達や事業拡大につなげていく。そのプロセスを通じて、関西から新しいチャレンジが羽ばたいていくような場にしていきたいと考えています。

 

ピッチ後のネットワーキングタイムの様子。活発に登壇者と参加者の交流が行われました!

― 最後に、QUINTBRIDGE会員の皆さんや、この記事を見られた方へ伝えたいことがあればお願いします!

洞桐さん         今回の登壇を通じて感じたのは、サービスやプロダクトは変えずとも、「投資家にどう伝えるか」という力や観点は大きくブラッシュアップできるということです。ピッチに挑戦する過程が、その後の成長につながる学びの機会になると思っています。

今後も「投資家に自分たちの魅力を伝えたい」というスタートアップの方にとって、Shining Startup SEEDは大きな一歩になるはずです!

また、「まだ世に知られていない原石のようなスタートアップを見つけたい」という投資家の方にとっても、新しい発見の場になると考えています。

関西・関東を問わず、次回も多様なスタートアップと投資家が集う機会にしていきたいと思っていますので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。

 

|次回の開催予定は12月!

次回は 12月11日(木)の開催を予定しています。

 

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