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- イベントレポート
部活動(吹奏楽)の地域展開を考える ― 地域と企業がともに描く、これからの“文化の支え方” ― イベントを開催しました!
- 公開日:
- 2026.8.5
2026年5月15日(金)、QUINTBRIDGEにて、NTT西日本主催の「部活動(吹奏楽)の地域展開を考える ― 地域と企業がともに描く、これからの“文化の支え方” ―」を開催しました。
近年、少子化や人口減少、指導者不足などを背景に、全国で部活動の地域展開が進められています。一方で、吹奏楽部においては、活動場所や指導者の確保、楽器の維持管理など、さまざまな課題も生まれています。
本イベントでは、自治体、学校関係者、企業、吹奏楽指導者など多様な立場の登壇者が集まり、吹奏楽という文化をどのように未来へつないでいくのかについて議論しました。
オープニング
司会を務めたNTT西日本 ミライ事業共創室の甲斐 由記さんは、自身も学生時代にトランペットを演奏していた経験があり、「吹奏楽文化を次世代へどうつないでいくか」という思いから、本イベントを企画しました。
そんな本イベントの会場には、教育委員会、学校関係者、吹奏楽指導者、保護者、企業関係者など、立場を超えた参加者が全国から集まり、その約8割がQUINTBRIDGEへの初来館。普段のイベントとは異なる顔ぶれが会場を埋め、吹奏楽の未来に対する高い関心と熱気に包まれました。
冒頭では、これまでQUINTBRIDGEで開催してきた吹奏楽に関する共創イベントや、高校生・社会人吹奏楽団による活動事例を紹介。
その上で、吹奏楽を取り巻く現状として、部員数や加盟団体の減少、人口減少や予算不足、指導者不足、練習場所や楽器保管の課題など、複数の課題が複雑に絡み合っていることを参加者と共有しました。
しかし、この課題に対して“唯一の正解”はありません。
「完璧な正解はありません」「自分と違う考えを否定しない」「新しいつながりをつくろう」というグラウンドルールのもと、「とにかくつながりを作ってほしい」。いままで出会わなかった人との掛け算で新たなイノベーション、ビジネス共創がうまれていくという甲斐さんのメッセージとともにイベントがスタートしました!
ライトニングピッチ
テクノロジーで距離の制約を超える可能性
永濱静佳 (Zucca) さん
tonari株式会社 創業メンバー
最初のピッチでは、東京からオンラインで参加したtonariの創業メンバーであるShizuka Zucca Nagahamaさんが登壇しました。
tonariは、離れた場所同士を常時接続し、まるで同じ空間にいるかのようなコミュニケーションを実現する技術です。用事がある時だけ接続するのではなく、常時接続のため、隣の部屋にいるような感覚で雑談や相談などの偶発的なコミュニケーションを生み出せることが特徴です。
吹奏楽の地域展開に活かせる可能性として、移動が難しい大型楽器の問題や指導者不足への対応、地域間格差の解消に、IOWN接続(※)のtonariの技術を活かせるのではないかと話し、学校や地域を超えて指導を受けたり、一緒に活動したりする新しい可能性について語りました。
また、リアルタイム合奏の実現に向けた可能性にも触れ、「技術は人を置き換えるものではなく、人と人をつなぎ、距離という制約を拡張するもの」とメッセージを送りました。
※IOWN(アイオン)とは
NTTが開発する次世代のコミュニケーション基盤。超高速・低遅延・大容量の通信を可能にし、よりリアルでスムーズな体験を実現する技術を使って、豊かな社会を創るための構想。
全国の“眠る楽器”を未来へつなぐ
服部 悟さん
株式会社服部管楽器 代表取締役
服部管楽器では、管楽器の販売・買取・修理に加え、吹奏楽部の地域展開を支援する取り組みを行っています。
服部さんは、地域展開における大きな課題の一つとして「楽器の確保」を挙げました。学校の部活動では学校備品を利用できていたものの、地域クラブになると十分な予備楽器を用意することが難しくなります。
一方で、全国には修理されないまま眠っている楽器が数多く存在しているとのこと。修理費用の高さや予算不足により使われなくなった楽器が各地に残されている現状を紹介し、「楽器は足りないのではなく、滞っている」と語りました。
現在は全国の休眠楽器を集め、自社で修理した上で格安レンタルする「楽器レンタ」に取り組んでおり、「まずはこの取り組みを知ってほしい」と呼びかけました。
子どもたちの活動の場を守るために
鯛 裕修さん
西宮市立鳴尾南中学校吹奏楽部顧問
鯛さんは、吹奏楽部の地域展開における現場の課題と取り組みについて紹介しました。
少子化や予算不足が進む中、部活動の地域クラブ化によって、希望する楽器に人気が集中し、編成バランスの維持が難しくなるなどの課題がうまれていくことも予想されます。
そうした中でも、小学生から社会人まで参加できる複数の組織体制を整備し、演奏機会を先に確保した上で、指導者や活動場所を整えていくというアプローチを実践するなど、「吹奏楽をやりたい子どもたち」の活動機会を守ることを目的に、地域バンドの立ち上げを進めています。
鯛さんは、「中学生を守ることは、吹奏楽の未来を守ること」と語り、子どもたちの活動の場を継続していく重要性を伝えました。
吹奏楽経験は社会で活きる力になる
河尻 健作さん
株式会社HUBatLIFE(HUB@LIFE)代表取締役社長
人事コンサルティングや組織開発を手がける河尻さんは、「仕事ができる人に吹奏楽経験者が多い」という自身の実感からお話をスタート。
吹奏楽部は単なる部活動ではなく、演奏だけでなく広報や運営、企画など多くの役割を担う組織であり、「学校の中に存在する企業」と、吹奏楽が学生に与える学びの機会の可能性を表現しました。
演奏本番に向けて長期間準備を重ねるプロジェクトマネジメント力や、言葉を使わずに意思疎通を図るノンバーバルコミュニケーション能力など、吹奏楽で培われる力が社会でも活かされていると語る河尻さん。
また、自身の就職活動で吹奏楽経験が十分に評価されなかった経験にも触れながら、「吹奏楽をもっと社会に開いていきたい」と話し、企業と吹奏楽をつなぐ新たな仕組みづくりの必要性を提案しました。
自動運転が地域の移動課題を支える
宮崎 一さん
NTTビジネスソリューションズ バリューデザイン部
最後は、NTTビジネスソリューションズの宮崎さんが、自動運転技術の視点から地域課題について紹介しました。
全国的なバスドライバー不足や高齢化により、地域の移動手段の確保が課題となっている現状に対し、NTT西日本は全国20以上の自治体と連携しながら、自動運転の社会実装を進めています。
自動運転の実証事例としては、山口県周南市での取り組みを紹介。地域住民の移動手段確保に向けて、自動運転技術を活用した運行実験が進められており、地域課題の解決に向けた取り組みが各地で広がっています。
また、バスの昼間利用の可能性として、医療やエンターテインメント、物流などへの活用にも言及。吹奏楽の文脈では、楽器の運搬などへの応用可能性も示され、地域の交通基盤を維持・発展させることが、文化活動を支える環境づくりにもつながるという視点が共有されました。
北海道安平町教育委員会 教育長 井内 聖さんによる基調講演
井内 聖さん
北海道安平町教育委員会 教育長
続いて、北海道安平町 教育委員会 教育長 井内 聖さんより、オンラインでご参加いただき、安平町で進められている部活動の地域展開についてご紹介いただきました。
安平町では、部活動を中学生だけの活動としてではなく、「地域のスポーツ・文化環境の一つ」として捉えています。人口減少が進む地域では、子どもだけで活動を維持することが難しく、大人も含めた地域全体で支えていく仕組みづくりが必要だといいます。
安平町の特徴的な取り組みの一つが、学校施設の地域開放です。学校内には地域住民用の入口が設けられ、図書室や会議室などの共有スペースを地域住民も利用できる環境が整備されています。
学校は児童や学生のためだけの場所ではなく、子育て支援センターとしての機能も担っており、料理教室や高齢者向けの健康イベントなども実施。子ども、高齢者、子育て世代が自然に交流する場となっています。
吹奏楽においても、子どもたちが「やりたい」と声を上げたことをきっかけに、図書館でコンサートを開催。昼休みの時間を活用した取り組みであり、学校行事としてではなく、参加したい人が自由に楽しめる場として運営したことで、教員への事前準備の業務負荷なく、成功につながったと話します。
さらに、吹奏楽の地域展開の一環として、合奏会の取り組みも実施。地域の指導者が子どもたちへ指導を行っています。
オンライン指導も取り入れており、指使いなどは現地で、アドバイスはオンラインで行うなど、状況に応じて柔軟に活用しているとのことでした。
講話後、会場の参加者からの質疑応答では、「10年後の安平町をどうしたいか」という視点から逆算して考えることの重要性についても言及。吹奏楽や美術などの文化活動が地域から失われる未来を受け入れるのか、それとも残していくのか。地域の人々と対話を重ねながら取り組みを進めてきたことが紹介されました。
会場からは、高校生との接続や、学校教員との連携についての質問も寄せられ、活発な意見交換が行われました。
■吹奏楽指導者 堀江 龍太郎さんとのトークセッション
左から、NTT西日本 甲斐さん、堀江 龍太郎さん(指揮者・吹奏楽指導者)
続いて行われたのは、吹奏楽指導者として全国各地で活動する堀江龍太郎さんと、司会のNTT西日本の甲斐さんによるトークセッションです。
現在、堀江さんは北海道安平町で地域展開された吹奏楽クラブの指導に携わりながら、全国各地で1日限りでさまざまなメンバーが集まって一緒に音楽を楽しむ合奏講習会「吹奏塾」の運営や、SNSでの発信も活発に行っているそうです。
そこで、まず話題となったのは、安平町での取り組みについてです。
堀江さんは、教育長や町長、保護者会などが一体となって取り組んでいる安平町の環境について触れ、「役場に行けば世間話ができるような距離感があり、フットワークが非常に軽い」と紹介しました。
クラブは2026年4月からスタートし、平日の夕方を中心に活動しています。部活動時代は7〜8人だった部員数も、クラブ化してからは15名まで増加。吹奏楽として合奏ができる人数になってきているとのことです。
また、クラブ化によって実現できたこととして、外部講師による指導やオンラインレッスンを挙げました。スタート以降、すでに複数回のオンラインレッスンを実施しており、全国の専門家による指導を受けられる環境が整いつつあります。
毎月、顧問以外の講師も招いており、中には東京から北海道まで足を運んで指導を行ってもらったケースもあったそうです。
こうした環境について堀江さんは、「安平町のクラブでは、やろうと言ったことをスピード感を持って実施できる」と語り、生徒たちも短期間で大きく成長していると、保護者会や教育委員会の皆さんが、一任してくれているからこそ実現できていると取り組みについて話しました。
最後に堀江さんは、クラブ化による課題について問われると、「地域展開については、まだ模索している段階」としながらも、「現時点では大きな課題は感じていない」とコメント。そのうえで、地域や保護者、生徒とのコミュニケーションを丁寧に行いながら、愛情を持って取り組んでいくことを大切にしていると語りました。
イベントの最後にはネットワーキングを実施!
教育委員会や学校関係者、保護者、企業関係者など、多様な立場の参加者同士が交流し、それぞれの地域で抱える課題や取り組みについて情報交換が行われました。
吹奏楽という共通のテーマをきっかけに、テクノロジー、教育、地域活動、人材育成、モビリティなど、多様な分野が交差した今回のイベント。
部活動の地域展開に「唯一の正解」はありません。しかし、地域や企業、学校、そして吹奏楽に関わる一人ひとりがつながり、それぞれの立場からできることを持ち寄ることで、新たな可能性が生まれることを感じる時間となりました。
今後もQUINTBRIDGEでは、社会課題と向き合う多様なプレイヤーが出会い、共創が生まれる場づくりを進めていきます。
イベントのスケジュールはこちらをチェック! https://www.quintbridge.jp/calendar/
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