【Local X STAGE QUINTBRIDGE賞】 環境問題を“みんなの課題”に。企業連携と場づくりで広がるごみの学校の挑戦
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【Local X STAGE QUINTBRIDGE賞】 環境問題を“みんなの課題”に。企業連携と場づくりで広がるごみの学校の挑戦

公開日:
2026.4.30

2025918日(木)に開催された『Local X STAGE 2025』にて、QUINTBRIDGE賞を授与させていただいた企業2社にインタビュー! 

 今回は、株式会社ごみの学校 代表 寺井 正幸さんに、事業内容、創業のきっかけ、Local X STAGE 2025登壇について、お話を伺いました。 

|Local X STAGE 2025 の概要

近畿経済産業局主催の、地域のものづくりコミュニティと企業をつなぐプログラムの一環。「Local X」(コミュニティ型産業集積)が生み出したイノベーション(ソーシャルインパクト)についてプレゼンテーションを行い、地域の大企業等が、共感・期待等の視点から考察し、大企業等から自社の成長とベクトルが合う登壇コミュニティに対して「企業賞」を授与し、今後のコミュニケーション機会を創出します。 

2024年に第一回、そして第二回となる今回は、2025918日(木)に開催されました。 

|QUINTBRIDGE賞について

Local X STAGE 2025 にて、QUINTBRIDGEより強く共感し、今後の活躍に期待する2つのコミュニティ「ごみの学校」「Factrismに、「QUINTBRIDGE賞」を授与させていただきました。 

 本記事でご紹介する「ごみの学校」の受賞理由を、QUINTBRIDGE 運営事務局 大谷 哲史さんは、こう語ります。 

 「大きくは3点ございます。 

はじめに、「海洋汚染」「食品ロス」などの言葉を普段から耳にすることが増え、自分も何かしないといけないと思いながらも、具体的に何をしたらよいか分からない、という人も少なからずいるのでは、と考えていたが、そういった手を付けづらい「ごみの領域」に対し正面から取り組まれている点。 

 そして、人の行動が変容するためには、「気づき」が必要だと考えますが、「学校」と銘打って、ともすれば利益には直結しづらい「学ぶ」プロセスから大切にされているところ 

QUINTBRIDGEでも、「学ぶ」「繋がる」「共創する」の3つの軸で、プログラムやイベントを実施しており、強く共感させていただきました。 

 最後に、「ごみの領域」を「静脈産業」として捉え、ビジネス性の観点でも、「価値の転換・循環・向上」によるサーキュラーエコノミー市場の規模は拡大傾向と分析されており、加えて、日本国内だけではなく世界全体が抱える社会課題への取組みとして、グローバルに展開していけるポテンシャルも感じられました。 

 ごみの学校の活動に強く共感し、QUINTBRIDGEとしても今後ともに共創の種を作らせていただきたいと思い、選ばせていただきました。」 

|事業共創インタビュー

株式会社ごみの学校 代表 寺井 正幸さん


ー 
ごみの学校の取り組みについて、お聞かせください。 

 一言で言うのはなかなか難しいことをやっているんですけど、ごみのことをいろいろな方に知っていただき、いろんな方々の価値観や考え方、行動を変えていくというのが、元々のベースにある会社です。 

 ですので、そこにつながることは本当にいろいろやっています。わかりやすいところでいくと、子どもたち向けのワークショップでごみのことを知ってもらったり、企業の中に入って、研修としてごみのことやサーキュラーエコノミーのことを学んでいただきながら、商品開発につなげたり新しいビジネスモデルを作れないかといったコンサルティングをさせていただくこともあります。 

 最近始めているのは「データラボ」という仕事で、ごみのことをもっと知るためのリサーチ業務もよく行っています。僕らもごみについてそれなりに歴は重ねているのですが、まだまだわかっていないことも多くあって。 

 最近だと、トヨタ紡織さんと一緒に、家庭のプラスチックを自動車向けのプラスチックにリサイクルしていこうという、家庭から出てくるどの材質が自動車用に向いているのかを調査する、3年間のプロジェクトをさせていただいています。 

 あとは、元々のごみの学校で取り組んできたコミュニティ事業も続けています。例えば、23歳くらいの小さな子どもからお年寄りまで、幅広い年齢の方を対象に、プラスチックビーズを使ったリサイクル体験や、さまざまな素材に触れてアップサイクル体験をしてもらうなどをしています。 

 また、学校でごみやリサイクルの授業をしてほしいという依頼もあり、自治体と連携した地域向けワークショップを行っています。中高生向けには、破砕機でごみを溶かしてキーホルダーを作る体験など、実際に触れて学べる授業も実施。参加者自身がごみを持参し、その場でプラスチックをリサイクルするワークショップも行っています。 


ー 現在、力を入れている取り組みはありますか。
 

これまで4年ほど活動してきて、累計で約1万人が私たちのワークショップやイベントに参加してくれました。ただ、1万人というと小さな町1つにも満たない規模で、1度聞いただけでは忘れてしまう方も多い。より社会に刺さる活動を実現するためには、既存のインフラを持つ企業と組む方が効率的だと考えています。企業と連携し、ごみの視点を入れながら物の作り方やサービスの届け方を変えることで、より大きな社会的インパクトを生み出せると考えています。 

 そこで、大きく二つの方向で取り組んでいます。ひとつは、企業と協力して商品やサービスづくりに関わること。もうひとつは、自治体やコミュニティと協働し、さまざまな人が関わる「場」をつくることです。 

ごみの学校のコミュニティは現在3,200人おり、企業や自治体が環境施策を進める際に、市民の力は非常に大きな支えとなります。専門家1人が入るより、環境に関心のある50人が集まる方が現場の動きが大きく変わることもありますよね。 

 具体例としては、今年京都の亀岡市で「めぐるひろばプロジェクト」を実施しました。地域の人々が集まり、ごみや環境について楽しく学ぶ場を提供しました。半田(はんだ)の技術を持つおじいちゃんが3歳の男の子のトミカを直すと、その子が翌日パジャマ姿でお礼の手紙を届けに来たり、外国から移住してきた方が金継ぎをしながら友達作りをしたり。 

 技術が循環し、物が直ることで環境に良いだけでなく、自分自身も前向きな気持ちになれる。子どもたちにとっても「物は直せる」という感覚が生まれ、自分で挑戦してみようという原動力にもなると信じて、活動を続けています。 


ー 
活動は、「ごみについて考えるきっかけをつくりたい」という思いから始められたのでしょうか。 

 元々、僕が廃棄物処理会社の会社員だった頃に、個人事業主的に発信をし始めたのがスタートでした。立ち上げは会社というより、「ごみの学校」というコミュニティをつくろうと思って始めて、あとから「株式会社」という名前がついたような感じです。 

 元々ごみの世界で働いていましたが、僕たちの手元に来た時点でどうにもならないごみって結構あるんですよ。「これとこれを混ぜられちゃうと、もうどうやってもリサイクルできない」というものがたくさんあって。「もっと世の中に声を届けていかないといけない」「そもそも知ってもらわないといけない」という思いがあって、発信し始めたのがきっかけです。 

 ビジネスマンというよりは、子どもたちや主婦の方など、「どう分別したらいいかわからない」という人や、逆に「そこまでしなくていいのに」というほど分別している人などを対象にしていました。 

 企業でも、「サステナ商品だ」と言われているけど全然サステナブルじゃないものがある。そういう背景もあり、ちゃんとした技術や知識を知ったうえで、「じゃあどうしようか」を考える機会をつくりたいという思いもありました。 

 もちろん環境問題を知ってもらうことは大事なんですが、それ以上に「ごみの素材のこと」「技術のこと」「法律のこと」などをちゃんと知ってもらって、そこから自分の行動を見直してもらう。そんなきっかけづくりをしたくて活動しています。 


ー 
最初はコミュニティから始まり、現在は法人化されていますが、法人化に至った思いやきっかけについて教えていただけますか。 

 元々コミュニティを2年くらい続けているのですが、最初はFacebookグループを立ち上げて、いろいろ喋った方々に「入ってください」という感じで勧誘活動をしていました。それを続けるうちに2年間で2000人くらい集まったんです。思ったよりもごみに関心のある方が多かったんですよね。 

 はじめは、子どもや主婦の方、地域の方のほうが需要があるかなと思っていたんですが、もともと一市民として僕の活動を知ってくださった方が、実は企業の環境担当をしていて、「うちの社員がこれを聞くべきじゃないか」という話をいただくこともありました。そうやってつながっていく中で、企業から正式に「仕事として依頼したい」という相談も増えたので、株式会社という形をとることになりました。 

 そうした中で、「新しいビジネスモデルを作れないか」ということも考えるようになったのですが、僕らのパワーだけでは限界があります。そこで、ビジネスモデルとして“ごみのことをみんなにちゃんとレクチャーした上でモノづくりをしたらどうなるか”といったことを、この間のプレゼンでも発信させていただいた、という流れです。 


 Local X STAGE 2025 にご登壇された感想を、お聞かせください。 

まず、すごくありがたかったですね。というのも、実は少し悩んでいたのは、スタートアップピッチの場に呼ばれることは多いのですが、「上場するんですか」「株価はいくらを目指すんですか」といった話になることが多くて、全然しっくりこなかったんです。 

 自分たちは、企業価値を最大化するといった感覚でやっているわけではなく、元々コミュニティから始まった組織で、「面的にどう広がるか」を考えてきたので、そういったピッチに乗り切れない部分がありました。 

 ただ、Local X の場合は、ローカルで面的に取り組まれている方々がすごく多くて、強く共感できました。ああいうふうに話していい場って意外とないんです。そういう話をフルスイングでさせてもらえたのが、本当にありがたかったです。 

 さらに、他の会社さんからのご相談もいただき、今は水面下でいろんな企画のお話が生まれています。 

僕らがビジネスサイドとして「研修しませんか」と売り込むのではなく、「世の中にこういうことがあったらもっと良くなるよね」といった話から始まる出会いが多かったです。

どちらか一方が儲かるというより、世の中のためにもなるし、企業にとっても良い。 

そういう "面的な取り組み”がしやすい場だったなと感じました。 

創業間もない時期のワークショップ@箕面こどもの森学園 ー子どもたちにPCの中身を説明して家電のリサイクルを語っている様子

 QUINTBRIDGE賞を受賞された感想をお聞かせください。

QUINTBRIDGEさんは、僕らが創業したての頃、よく共同経営者と来させていただいていたんです。最初は施設のことをあまり知らずに、「無料で利用できるすごくいい場所がある」という気持ちで(笑)。 

そこから、法人登記して3ヶ月くらいのタイミングで「山崎ゼミ」に入り、事業計画をブラッシュアップしてもらったご縁のある場所で。今回賞をいただけたのは、すごく嬉しかったですね。 

 創業当時は「会社を作ったけれど、どうしよう」という打ち合わせをよくしていましたし、今回のプレゼンでも他の登壇者の方々が魅力的で個性も強かったので、正直、自分たちが選ばれるとは思っていませんでした。 

劣等感というほどではないですが、他の方と比べると歴史が浅いと感じていて、活動が3年、会社にして1年という状態だったので、「大きい企業の方と組めるステージにいるのかな」と悩む部分もありました。 

 そんな中で選んでいただけたこと、そして創業期を支えてくださったQUINTBRIDGEさんに評価していただけたことは、なおさら嬉しかったです。もし選ばれなかったとしても「何かやりたい」と思っていた場所なので、恩返しができたような気持ちになりました。 


ー 山崎ゼミにもご参加されていましたが、いかがでしたか。
 

山崎さんのことは以前から存じ上げていたのですが、ゼミの内容が僕らにちょうどよかったんです。 

 元々、最初の2年間は、営利前提の設計で活動していなかったので、その状態から「お金を回しつつ、会社としての体質に変えていかなければいけない」というタイミングでした。そんな中で「思いを1億円に変える」というタイトルのゼミは、まさにど真ん中でした。正直、何をするのかもよくわからないまま、見つけてすぐ申し込んだんです。 

 実は僕ら自身も当初は悩んでいて、 

・ごみに詳しい個人事業主のコンサルとして続ける規模感 

・売上や利益だけを目的にしない一方で、もっと大きな経済の仕組みをつくる会社として挑戦する規模感 

の二択の中で揺れていました。 

 そんなときに山崎さんから1億、10億を目指せるポテンシャルがある」と言っていただけたことで自信が持てました。もしあそこで「全然ダメだ」と言われていたら、多分そのまま個人事業主の延長で進んでいたかもしれません。きっと5年後、10年後に「ごみの学校の初期の話を聞かせてください」と言われたら、QUINTBRIDGEでの山崎ゼミの話は確実に出てくると思います。 

「山崎ゼミが、ターニングポイントとなった。」とお話する寺井さん。


ー 今後の展望をお聞かせください。
 

これまで商品づくりなどに取り組んできましたが、半歩先のチャレンジを考えています。 

 例えば、経済的・政策的な理由で放置されがちな海洋ごみ問題。海洋ごみを拾っても儲からないですし、自治体も流れ込むごみに財源を投資するなら、子どもたちや市民の未来に投資したいという状況があります。 

最近のリチウム電池も同じです。企業がビジネスモデルで回収しようとしても、リスクや量の少なさが障壁になります。 

 そうした課題に対して、ごみの学校としては「儲かるかどうか」ではなく、チャレンジできる組織でありたいと考えています。 

たとえば海洋プラスチックを使ったものづくりや、リチウム電池の安全でわかりやすい回収仕組みづくりなど、実証実験フェーズからさまざまな方を巻き込んで進めています。将来的にビジネス的に展開できそうな段階になったら、適した方々にインフラを任せるなど、大きな仕組みにしていきたいですね。 


ー 最後に
QUINTBRIDGEの会員さんへメッセージがあればお願いします! 

環境に関心がある、サステナブルなものづくりをする価値観の合う企業と取り組みたいと思っています。また、IoTやマーケティング、デザインなど、まだ不足しているスキルを持った方々がごみの世界に関わっていただければ、さらに可能性は広がると考えています。 

 あと最近は、ポッドキャスト「ひらけごみ!」を今年10月から始めました。会社としても注力しているので、ぜひ聞いてみてください! 

 『ひらけごみ!』ごみの学校 ポッドキャスト 

URLhttps://open.spotify.com/show/5A5n9G9FZSmWK2zPGM3tFt 

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