【YUAGARI project発足イベントレポート】共創の結集!牛乳石鹸初の家電は、いかにして生まれたか
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【YUAGARI project発足イベントレポート】共創の結集!牛乳石鹸初の家電は、いかにして生まれたか

公開日:
2025.8.29

牛乳石鹸初の家電開発の裏には、QUINTBRIDGEで出会った”共創”の物語がありました。本イベントでの、牛乳石鹸共進社株式会社による『YUAGARIプロジェクト』について、そしてその裏側を、パネルディスカッションやインタビューを通じて伺いました。

|イベントの様子

2025年7月28日、QUINTBRIDGEで開催された「YUAGARI project」発足イベント。創業100年以上の歴史を持つ牛乳石鹸が、なぜ今“新規事業”に挑むのか。その背景には、現状維持への危機感と、これからの時代に即した価値創造への強い覚悟がありました。

本イベントで発表されたのは、服を着たまま洗髪できるポータブル洗髪キット「SUSUGU」。開発のきっかけは、東日本大震災で被災経験のある方の「髪が洗えない不快さ」に対する切実な声だったといいます。“お風呂の心地よさ”は日本人の暮らしに深く根付いた文化。それを「持ち運べる形」で再定義するという発想には驚きとワクワクがあります。

|製品の「SUSUGU」

少量の水で、手軽にどこでも洗髪を可能にします。

第二部のパネルディスカッションでは、開発パートナー同士によるSUSUGU開発の裏側トークを公開

晴海株式会社 営業部 寺澤 克己さんベス工業株式会社 技術グループ 平井 誠也さん、そして牛乳石鹸共進社株式会社 新規事業室 江越 亮一さんの3社それぞれの、技術面での苦労や共創の面白さがリアルに語られ、老舗メーカーの新たな一面を見ることができました。

|イベント当日の展示ブース

当日は、QUINTBRIDGE現地にて「SUSUGU」を体験できる展示ブースを用意!

さまざまな試行錯誤がされた試作品たち。

「牛乳石鹸って、こんな挑戦もするんだ!」そう感じた方も多いのではないでしょうか。お風呂の価値を外に持ち出すYUAGARIプロジェクトはまだ始まったばかり。今後の広がりにも大いに期待したいプロジェクトです。

|事業共創インタビュー:牛乳石鹸 大形さん・Ledesone 常岡さん

左から、合同会社Ledesone(レデソン) 代表 常岡天祐さん、牛乳石鹸共進社株式会社 新規事業室 大形広太郎さん

|老舗石鹸メーカーが挑む、“お風呂の価値”を広げる新規事業とQUINTBRIDGEでの出会いが生んだ共創

QUINTBRIDGEの法人会員である牛乳石鹸とLedesoneは、医療的ケアが必要な方々の声を、共創で新たなプロダクト「SUSUGU」の開発に活かしました。そんな2社の出会い、共創内容について、お話をお伺いしました。

ー 今回、Ledesoneさんとの共創のきっかけについて、教えてください。

大形さん   きっかけは、QUINTBRIDGEで Ledesone さんが主催していたワークショップに参加したことでした。

当時、私たちは社内で視覚障害者の方を対象にしたインクルーシブデザインのワークショップを実施していたこともあり、「インクルーシブデザイン」という言葉に強くアンテナが立っていたんです。

その流れで、発達障害のある方とのワークショップがあると知って、「あ、こういう切り口もあるんだな」と興味を持ちました。発達障害は、目に見えにくい課題が多いという印象があったので、「実際にどんなふうに感じられるんだろう」と思いながら参加してみたんです。それが、常岡さんとの出会いのきっかけでした。

ー その際の Ledesone さんの印象はいかがでしたか。

大形さん   最初に参加したのは、発達障害のある方とのワークショップでした。私は2回ほど参加したんですが、そのうちの1回が、特に印象的でした。参加者は3〜4人のグループに分かれていたんですが、どの方が発達障害を持っているかは明かされていなかったんです。だからこそ、自然な関わりの中で「違い」を感じたり、気づきを得ることができました。

そのとき、常岡さんが司会をされていて。私自身、この領域に関して具体的なイメージが持てていなかったんですが、進行の様子や場づくりの丁寧さから、「こういう分野に本気で取り組まれている方なんだな」と感じました。

全体を包み込むような安心感もあって、初めての場でも自然と対話が生まれたのを覚えています。

ー 共創を通じて、改めて良かった点や、特に参考になった点をお聞かせください。

大形さん   やはり一番大きかったのは、実際に課題を抱えるモニターの方々の声を直接聞けたことです。これは、Ledesoneさんとの共創があったからこそ実現できたことで、私たちだけでは到底できなかった部分だと思っています。

加えて、Ledesoneさんは本当にフットワークが軽くて、私たちの取り組みに対して、柔軟かつスピーディに関わってくださいました。そういったスタンスも非常に心強かったですね。


本当にさまざまな視点をいただき、実際の商品開発にも活用させていただきました。たとえば、製品のサイズ感や、ボタンの押しやすさ・押すタイミングなど、非常に具体的なフィードバックが多かったです。そうした意見が、実際のプロダクト設計に大きく反映されています。
また、当初は在宅介護や高齢者向けの課題解決を想定していたんですが、いざモニター募集を始めてみると、意外にも医療的ケア児のご家族からの反応が多かったんです。そこから「高齢者」だけでなく「医療的ケアが必要な子どもやその家族」も含めた幅広いニーズがあることに気づかされました。
その視点の転換も、共創の中で得られた非常に大きな学びだったと思います。

ー 今後のLedesoneさんとの共創の可能性、そして牛乳石鹸さんとしての今回のプロジェクトの展望について教えてください。

大形さん   Ledesoneさんとは製品が完成してからのお付き合いではなく、もっと前の初期段階から共に取り組んできたパートナーです。私たちの思想や背景を深く理解してくださっていて、そういった意味でも今後も長く一緒に取り組んでいける関係だと感じています。

今は「これをどう世の中に届けていくか」というフェーズに入ってきており、発信の方法についてもLedesoneさんと一緒に考えています。彼らと一緒であれば、より解像度高く、私たちの想いを社会に伝えていけると思っています。

ちょうど今回、「YUAGARIプロジェクト」という形で初の発表をさせていただきました。この取り組みは、製品やサービスの枠にとらわれず、関わる人々の「価値」を外へ持ち出す、という発想から生まれています。今後はイベントや体験の場づくりなど、さまざまな形で発信を続けていきたいと思っています。

また、「実際に使ってみたい」という声もすでに多く寄せられているんですが、私たちはこのプロジェクトをわずか3名の新規事業チームで運営しており、現状すべてのご要望に応えるのが難しいという課題もあります。今後は、そうした“試してみたい”という声にどう応えていくかをしっかり考え、体験の機会を広げていきたいですね。

そして、より多くの人たちの日常に、やさしい変化を届けられたらと思っています。

ー 最後に、今回の共創を通じて特に伝えたいことがあれば教えてください。

大形さん   そうですね。改めて振り返って「常岡さんと共創できて本当に良かった」と思っています。

というのも、よくある形としては、調査会社に依頼するケースも多いかと思うんですが、Ledesoneさんはそうではなく、ご自身のネットワークや現場感を生かしながら、私たちの課題に本当に親身になって向き合ってくれました。まさに“同じ目線”で取り組んでいただけたことがとてもありがたかったですね。

新規事業室という立場上、潤沢な予算があるわけではないのですが、限られた中でも、最大限のことをしてくださった。それがすごく大きな信頼につながりましたし、「出会えてよかった」と心から感じています。

ー QUINTBRIDGEの会員さんにむけて、「ぜひこんな方とつながりたい!」というメッセージがあればお願いします。

大形さん   私たちは「お風呂」という日常の中にある価値を、もっと外へ広げていきたいと思っています。牛乳石鹸は身体を洗うための製品をつくっているメーカーですが、それだけに思考が限定されがちなところもあります。だからこそ、自由な発想で「こんなこと一緒にやってみませんか?」と声をかけてくださる方との出会いを大切にしたいです。

業種や職種にはこだわっていません。私たちの想いに共感してくださる方であれば、どんな方でも大歓迎です。noteなどでも日々の取り組みを発信していますし、今日のようなイベントも、自分たちの手で一からつくり上げてきました。

【牛乳石鹼note】https://note.com/cow_soap

今回の共創パートナーも、どこかの代理店経由で出会ったわけではなく、縁と想いを紡いでつながった方ばかりです。そんなふうに、共感から始まる出会いをこれからも大切にしながら、一緒に手を取り合って歩んでいける方と出会えたら、とても嬉しいですね。

|「ともにつくる」姿勢で深掘った、ユーザーのリアルな声

続いて、Ledesone 代表 常岡さんへお話をお伺いしました。

ー 今回、牛乳石鹸さんと初めて出会ったきっかけについて教えてください。

常岡さん   QUINTBRIDGEで2022年に実施したイベントに、牛乳石鹸の大形さんが参加いただいたのが最初の出会いです。

その後も、別の会場で開催したイベントにも継続して参加してくださって、複数回の接点を通じて、今回の共創につながっていったという流れです。

ー 改めて、今回の共創の内容について教えていただけますか。

常岡さん   今回の共創では、大きく分けて3つのフェーズでご一緒しました。

まず最初は、医療的ケアが必要な方々を対象としたユーザー調査・検証からスタートしました。実際に医療的ケアの必要なお子様のご家族の方々にご協力いただき、課題やニーズを丁寧にヒアリングしながら、プロトタイプの段階から検証を重ねていきました。

次のフェーズでは、実際に製品が完成したタイミングで、再度ユーザーの方々に使っていただき、そのフィードバックをもとに改良や発信へとつなげました。

最後のフェーズでは、製品を使ってみた感想を記事コンテンツやショート動画として発信。たとえば、牛乳石鹸さんの公式noteでの発信や、弊社メンバーが実際に使っている様子をショート動画で紹介するなど、多面的なコミュニケーションを展開しました。

ユーザー検証から製品開発、発信まで一貫して共創を行ったプロジェクトでした。

【牛乳石鹸note】

 牛乳石鹸体験レビュー記事

 https://note.com/cow_soap/n/nd3576fe55e66

 https://note.com/cow_soap/n/n2ca14e81e453

 ショート動画

 https://youtu.be/TAKXGhLDF3I?si=4t4BZzwYyLwTjBns

ー 実際にユーザーの声を聞く中で、印象的だったエピソードや気づきがあれば教えてください。

常岡さん   たとえば医療的ケアが必要なお子さんの場合、長期入院をされているケースが多いんですね。入院中は看護師さんのサポートもあるんですが、頭まわりのケアって、どうしても後回しになりがちなんです。親御さんとしては「少しでもお風呂に入れてあげたい」という想いがある。でも小さなうちは抱きかかえて洗ってあげることができても、成長して体が大きくなってくると、だんだん難しくなってくる。

そうした中で、「このプロダクトがあると本当に助かる」「ぐっと楽になる」といった声を実際にいただいて、それが大きな手応えになりました。

また、これはまだ検証段階ではありますが、発達障害や精神疾患を抱える方からも、「お風呂に入るのがしんどく感じるときに、これはすごく使えそう」といった声をSNSでいただいたりしています。

私自身も、バイクに乗ってヘルメットをかぶると頭が汗で蒸れてしまったりするのですが、そのあとヘルメットを脱いだときに使ってみたら、めちゃくちゃスッキリするんですよ。そういう意味でも、本当にいろんな場面で活用できる可能性があると感じています。

ー 今後のコラボ予定や可能性はありますか。

常岡さん   現在進行中のプロジェクトがひとつあります。詳細はまだお話しできない段階ですが、今後も継続的に取り組んでいく予定です。どうぞお楽しみに。

ー 最後にお伝えしたいポイントなどが あればお願いします。

常岡さん   私たちは「ひとりひとりが過ごしやすい社会をともにつくる」ということを理念に掲げて活動しています。その「ともに」という部分を、パートナー企業さんと一緒につくっていきたいと思っているんです。牛乳石鹸さんは、その大切なパートナーの一つだと感じています。

なので今後も、例えば牛乳石鹸さんのように、特定の課題を持っている方々を巻き込みながら製品開発をしたいという企業さんがいらっしゃれば、ぜひQUINTBRIDGEなどでも、ご気軽にお声がけいただきたいです。

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