“土” の未来をつくる~crQlr Meetup OSAKA vol.1~
  • イベントレポート

“土” の未来をつくる~crQlr Meetup OSAKA vol.1~

公開日:
2024.2.5

『 “土” の未来をつくる~crQlr Meetup OSAKA vol.1』を開催

crQlr Meetup(サーキュラー ミートアップ)は、循環型社会をめざす「未来のつくり手」たちの有機的なつながりを生み出すことを目的に、世界各地のFabCafe/ロフトワークが主催するイベントシリーズです。
初の大阪開催となる今回は、ロフトワークとQUINTBRIDGEが共同開催。デジタルテクノロジーや土壌改善技術を活用して農業の持続可能な発展に取り組む企業、そして、土を取り巻く環境、製品、サービスに携わるスタートアップ等、多彩なプレイヤーとともに「土の未来」を考えるイベントの様子をレポートします!

参加者で満員の会場

|イベント概要

*本イベントの企画と司会進行を担当した株式会社ロフトワーク マーケティング & プロデュース 木下 浩佑氏

第一回 crQlr Meetup OSAKA。
NTT西日本をはじめデジタルテクノロジーや土壌改善技術を活用して農業の持続可能な発展に取り組む企業、そして、土を取り巻く環境、製品、サービスに携わるスタートアップ等、多彩なプレイヤーとともにケーススタディの共有とオープンディスカッションを通して、「土の未来」を考えます。



|ライトニングピッチ


*QUINTBRIDGE会員によるショートピッチの企画を担当した NTT西日本 イノベーション戦略室 下川哲平

まずは土を取り巻く環境、製品、サービスに携わるスタートアップや企業による長短時間ピッチ「ライトニングピッチ」を行いました。今回ご登壇いただくみなさまは全員QUINTBRIDGE会員です。

LED、水、空調によって管理された空間で、野菜や植物等の計画生産を可能にする「植物工場」の取り組みや、林業を通して土砂災害リスクの低い山林を増やすプロジェクト、循環による持続可能なまちづくりの取り組みなど、それぞれの視点で循環型社会の実現に向けた取り組みをピッチいただきました!


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■「植物工場」がつくる、農業のカタチ『どこでも農業が世界を変える』
スパイスキューブ株式会社 吉浦諒平 様

LED、水、空調によって管理された空間で、野菜や植物等の計画生産を可能にする「植物工場」の設計を請け負い、今後の農業を担う企業に対し、工場の建設だけでなく、農業コンサルタントを現地派遣しまして生産・販路までのコンサルティングを行い支援します。農業は7割が60代以上の高齢者と人材不足という課題がある中で、安心して国産の作物を食べられる社会をめざし中小企業の農業参入を室内で計画的に野菜をつくる「植物工場」。天候や害虫の影響を受けずに高品質な野菜を生産でき、低コストでどんな場所でも農業を可能に!




■「土砂災害による人的被害をゼロにする」〜林業を通して土砂災害リスクの低い山林を増やす〜
株式会社ソマノベース 松下登志朗 
https://somanobase.com/

ソマノベースは、「山づくりで土砂災害の人的被害をゼロにする」をビジョンに掲げ、「山林活用支援事業」「木材製品プロデュース事業」「木育事業」の3つの事業を行っています。日本の市町村の92%が土砂災害危険区域を保有し、令和2年の水害被害(土砂災害・洪水等)は6,600億円にも及びます。年々発生件数と被害額が増加傾向にある水害を、林業を通じて解決するべく、森林産業コミュニティを作り林業と他業界をつなぐ役割を担います。育てた苗木が木材製品として戻ってくる、購入者が山づくりに参加できる新しい形の観葉植物「MODRINAE」等を展開しています。




■いまの都市を分解可能な都市へリデザインする
株式会社ロフトワーク コンポストアドバイザー 岩沢エリ 様
https://loftwork.com/jp/

堆肥について学ぶにつれ、「いい堆肥は、いい土と水をつくり、おいしい野菜がそだつ」、つまり堆肥技術は有機物(消費物)を土に還し、自然が命をはぐくむ力(生産)を養う分解のテクノロジーということを感じ起業。生産・消費だけでなく分解、再利用する必要があると感じ、都市を生産力ではなく、分解力で見つめ直す実験駆動コミュニティを始めました。リサイクルセンターをクリエイティブ分解センターにする等、共創できる方を探しています!





■循環による持続可能なまちづくり
岡山県 真庭市 産業観光部 農業振興課 農政企画室 藤田浩史 様

循環による持続可能なまちづくりに取り組む岡山県真庭市では、家庭の生ゴミや汚水をメタン発酵させ消化液にし、農地に還元、循環していくという取り組みを行っています。市内のごみステーションで収集し、バイオ液肥を作り無料で配布。また、資源循環の拠点として「生ごみ等資源化施設 バイオ液肥濃縮施設」を2024年秋より稼働予定です。全国初のメタン発酵消化液の濃縮を行い肥料成分が薄いという課題解決にも取り組み、持続可能な農業、まちづくりを推進しています!





■「”土”の未来をつくる」自然がある限界集落は限界集楽なのかもしれない〜自然エネルギーの視点〜
株式会社エイワット 代表取締役 柴田政明 様
https://eiwat.co.jp/

デンマークで環境政策と再生可能エネルギー技術を学び、1997年に新エネルギー事業を開始。環境と再生可能エネルギーに焦点を当て、持続可能な開発に取り組むもそれだけでは循環型経済システムのビジネス化が困難という課題に直面。そこで地下土壌の微生物を活用し、CO2を固定化しつつ農産物の生産を増やす方法を模索しました。「Green school: Thrive with purpose: 自然との共生パーマカルチャー」の考え方を日本に導入し、モノづくりの基本に立ち返り、将来的には地球環境に貢献する製品を作ることを目標としています。




■「山林を資源化し、循環する里山をつくる」
株式会社フォレスト・ドア 正垣 直人 様
https://forestdoor.co.jp/

兵庫県丹波市の廃校利用施設 発、「廃校」×「森林資源」の利活用による、中山間地域の循環型社会形成に取り組んでいます。2023年春には宿泊施設も追加され、企業や行政、大学の研修施設としても活用いただける廃校施設となりました。日本では諸外国と違い、木を切ることができないという課題があります。しかし、土砂崩れや花粉症問題等の課題解決には森林整備が必要です。そこで、木を切り木材にする価値を見出すための資源化活動、山の利活用等、森と人の暮らしをつなぐ玄関口となる活動をしています。

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|ケーススタディ


続いて、NTT西日本をはじめデジタルテクノロジーや土壌改善技術を活用して農業の持続可能な発展に取り組む企業、そして、土を取り巻く環境、製品、サービスに携わる企業の事例紹介プレゼンテーションを行いました。


■“宇宙空間”でも農業はできるのか?宇宙と地球で、サステナブルな食料生産システムを実現する
株式会社TOWING 代表取締役CEO 西田 宏平 様
https://towing.co.jp/

TOWINGは、環境に配慮した人工土壌「高機能バイオ炭」を活用した次世代の作物栽培システムを開発・販売する名古屋大学発スタートアップです。「宙炭 -SORA TAN-」と名付けた高機能バイオ炭は、たい肥、元肥、土壌改良材の代替に利用したり、さまざまな苗用土に対応可能です。3〜5年かかる微生物がいる土作りを、宙炭なら1ヵ月で再現し、農地への炭素固定が可能に。葉物の作物に対しては実証実験済みで、コストは同等、収穫量は1.2倍、耐病性は向上効果、GHG排出低減を促す等の結果が出ています。バイオマス排出企業としても、処理方法変更によるコスト低減、GHG排出量低減等メリットがあります。未利用資源のアップサイクルにより、持続可能な食料生産システムを”ともに”築いていきます。




■生物多様性に配慮した有機栽培のデジタル化への挑戦
NTT西日本 イノベーション戦略室 事業開発担当シニアマネージャー 駒 寿浩 様

「土壌のテーマでこんなに人が集まるんだと驚いています。」と目を輝かせた駒さん。

NTT西日本は、「人と自然とが共存共栄するサステナブルな農業」をテーマに、地球温暖化、生物多様性の損失等、地球環境の問題解決への取り組みとして、土壌を修復・改善しながら自然環境の再生を促す環境再生型農業(リジェネラティブ農業)に挑戦しています。日本の有機農業の割合は0.5%と先進国の中でも少ない状況にあります。また、化学肥料の原料は、ほぼ100%輸入に依存しています。持続可能な循環型農業、つまり、化学肥料や農薬に頼らない「21世紀の緑の革命(農業革命)」が求められるいま、土の未来をつくる=日本の未来の農業をつくるために、有機農業プラットフォームの新規開発、地域食品資源循環ソリューションとの連携、に取り組み、未来のオーガニック市場の拡大、つまりは有機農業の生産者、エシカルな消費者の拡大に挑戦して参ります。





■人と緑が循環するエンディングのあらたな選択肢「RETURN TO NATURE」
at FOREST株式会社 代表取締役 CEO 小池友紀 様
https://atforest.co.jp/


核家族化や未婚者の増加等により無縁墓の不安を抱える人が増加している現代社会。欧米の先進国では死を扱うスタートアップやベンチャーが続々と登場しています。「日本のお墓にも時代にあった選択肢があっていいのでは?」とスタートしたのが「RETURN TO NATURE」です。寺院保有の放棄林を利活用し、自然に優しい循環葬®️という方法で埋葬、売上の一部を森林保全に還元するという新しいサービスです。森の景観を守りながら、墓標を建てない循環葬でご遺骨を森の栄養として循環させ、お墓参りは森林浴に、という人と地球に優しい選択肢を提案しています。

|オープンディスカッション


*トークセッションのモデレーターは、株式会社ロフトワーク プロデューサー 小島和人 様(写真右)

オープンディスカッションは、情熱をもって循環型社会の実現に取り組むプレーヤー同士の本音トークで大いに盛り上がりました!

ピッチやプレゼンテーションでは、重要な視点やキーワードが登場しましたが、お話がリンクするような瞬間が多かったのが印象的でした。共通で話題にあがったのは、数十年前だとコスト面やマネタイズの課題から断られていた提案が、時代の流れで求められるようになったということ。会場にも多くの方に参加いただいていることからも、いま「土の未来」をテーマに循環型社会の実現が注目を集めていること、関心が高まっていることが伺えます。

土に関するテクノロジーは、農業のためだけでなく自然災害やまちづくり等のさまざまな領域に活用できる話題も。多種多様なアセットを持つ会員が集まるQUINTBRIDGEだからこそ、いままでになかった共創や新たなアイデアが生まれる予感がします。


スタートアップ目線で大企業の方へ、「農業のプロジェクトをする際の、人・金・モノ・情報のリソースをどこで確保するのか」という”リアル”な質問も飛び交いました!

林業のマネタイズに関する課題や規制についてもディスカッションされました。個人・企業だけでなく行政をも巻き込み大きなムーブメントにしていくために、共感をどう作っていくかという話題では、テクノロジーはもちろん、めざす未来への期待やわくわくをプレゼンテーションしていく必要があるとお話いただきました。

|つながりの場

本イベント後の交流会では、「土」をテーマに活動される方や関心のある大企業、スタートアップ、自治体等の幅広い方々が、活発に情報や意見の交換をする様子が見受けられました。

今回のように、QUINTBRIDGEでは共通の課題やテーマを持ち寄るイベントも数多くあり、多様なバックグラウンドを持つ関心の高い参加者が集まり、共創が生まれるきっかけとなっています。

イベント参加はもちろん、開催したいテーマも随時募集しておりますので法人会員の方はご気軽にQUINTBRIDGE運営局にご相談ください!

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